スーパーカブで日本一周

  523日間に渡ったスーパーカブ90での日本一周の記録、およびその後日談を語ります。

仕事を辞めました

今日は重大な発表をさせていただきます。
去る九月末日をもって仕事を辞めました。理由は言うまでもなくただ一つ、日本一周の旅を再開するためです。
旅の再開にあたっては新しいブログを立ち上げるつもりでいますが、そちらはただ楽しく旅のことだけを書くブログにしたいし、また自分のことを人にあれこれ聞かれるのが大嫌いなので、ここで一度だけ、今思っていること、人生と旅についての自身の考えを書き記しておきたいと思います。

この歳ですから、これは簡単な決断ではありませんでした。六年間考え抜いて、悩み抜いた末の答えです。私の心の中には、いつでも一つの問いがありました。それは「自分は何のためにこの人生を生きているのか」というものです。そしてそれは「人生における幸せとは何か」という問いでもあります。
結婚なんて頼まれてもしたくないし、仕事で成し遂げたいこと、叶えたい仕事なんてものもありません。広い家に立派な車、最新の家電…そんなものにも全く関心がないです。むしろそんな自分をひとところに縛り付ける物、あげるよと言われても御免です。それどころか極力物を持たない生活をしているので、六畳一間でも持て余してしまってがらんどうです。こういった一般的な願望、欲求が私の場合殆ど全部旅に向いているのだと思います。そういう実に偏った性質の人間なのでしょう。
あらゆる所に自分で足を運んで、いつか世界の何処かの見知らぬ、生まれ故郷と縁もゆかりもない土地で一人静かに野垂れ死ぬ…これが子供の頃から今も変わらぬ憧れです。

実際には、そんなこときっと叶わないでしょう。体が不自由になったら慣れ親しんだ土地を離れられなくなるだろうし、そもそもそんな風にある日すっぱりと往生できる程徳を積んで生きてきたわけじゃありません。病に苦しみ、床から動けずに辛い晩年を過ごすのだろうと自分でも思います。
そしてその時に何より大事なのは金です。家庭を持たなかった報いが後で返ってくるというわけです。自由が利かなくなった時に世話を焼いてくれる人もいない。私には妹がいますが、嫁に行った女兄妹など所詮は他人。母が死ねば事実上の天涯孤独です。そうなった時には、世話、快適を金で買うしかないのです。何が言いたいのかというと、金の無い老後ほど悲惨なものはないということです。仕事を辞めた今、一歩この状態に近付いたわけです。

現在私は、辛うじて八桁に乗ろうかという貯金があります。が、ある試算によれば、独り身の老後を不自由なく過ごすためには最低でも3,600万円の貯金が必要とも言われています。高度先進医療を長期に渡って受けなければならない状況にでもなれば、きっとこれでも不足するのでしょう。この三分の一にも満たないわけです。そしてこのなけなしの貯金も、旅に出れば収入が無くなるわけですからどんどん目減りします。あっという間に七桁に転落するでしょう。



三十代の半ばで同じように一度社会を外れたヤクザ者の私は、先の日本一周を終えた後、一般的な会社で言うところの契約社員の形で仕事に就きました。ところが、何の才覚も資格も無いこんな私を買ってくれ、僅か一年で登用してくれたのです。収入は増え、そして少なくとも今の仕事を続ける限りは、仕事の予定の殆どを自分で決められるという極上のおまけまで付いてきます。これは平日に連続した休みが取れるということを意味しています。それによってこれまでに多数の中・大規模活動を行ってきたことは、日常ブログで報告してきた通りです。
これらの全てを、私は自らの意思で一方的に放棄しました。それは自分自身の問題だけに終わらず、私を買ってくれた人の恩を裏切ることにもなってしまいました。
百人いたら九十九人の人が「絶対にあり得ない」「考えられない」と思うでしょう。私もそう感じます。けれど、いつでも私の心は巡り巡って最初の問いに戻ってしまうのです。自分は何のためにこの人生を生きているのか、と。

そうは言っても後になってきっと後悔するぞ、金の無い老後ほど悲惨なものはないと分かっていながら、どうかしている。きっと多くの人がそう言うでしょう。その通りだと思います。後悔する可能性が極めて高い。
でも、旅に出ないでいたら百パーセント確実に後悔するのです。物理的に困窮するのはもちろん辛いですが、このまま旅に出ないまま老いてしまったら、何のために生きてきたのか分からない、生きているのか死んでいるのかも分からないような、そんな頭に靄がかかって何も覚醒しないような状態のままで人生が終わってしまうのです。どのみち後悔するのであれば、生きている喜びを感じ、血を巡らせていることを実感した上で後悔したいのです。

ここまで話を詰めても、仕事を辞めて日本一周に出ずとも実はあと一つだけ選択肢がありました。
私の古い友人に、生涯独身を宣言し、日々の仕事は糧を得るためのものと割り切り、人生の情熱の全てを旅にかけている男がいます。歳は私と一つしか違いません。彼は毎週末およびその他の休暇の殆どを旅の空で過ごしています。それも、土曜の早朝に出発し、日曜深夜から日付変わって月曜の未明に帰宅するという徹底ぶりです。
この選択ではいけなかったのか。これが社会的にも健全な唯一の落としどころではないのか。
これについては毎日考え、悩み続けてきました。この六年間、この事について考えなかった日は一日だってありません。でも、私にはどうしてもそれが出来なかった。
スーパーカブに乗って本当の長旅をしたかったというのがもちろん第一ですが、それだけでなく、いやある意味それよりも重いもう一つの要因があります。私は生来の怠け者である上、しっかりと睡眠をとらないと駄目な人間です。睡眠の方で無理が利かないのです。世の中には多少寝不足が続いても大丈夫だったり、一日に四、五時間の睡眠でも平気で生きていける人もいますが、そういった人達が羨ましいです。
こんな人間ですから、休日の朝には惰眠を貪り、野球観戦やアイドルといった他のもっと手軽な趣味にかまけてしまい、全力で旅に取り組むことをしなくなってしまいます。実際にこの六年間もそうでした。その全てが無意味だったとまでは思いませんが、それでも大きく振り返れば、これも何のために生きているのか分からない、生きているのか死んでいるのか分からない日々だったと言っていいでしょう。

働かざる者食うべからず、という言葉があります。人に養ってもらっていてはいけないよ、自分で働いて稼いで食いなさいよ。長いこと、そんな額面通りの意味としか捉えていませんでした。しかし、この言葉の真意はそんな薄っぺらいものではありません。
一人一人の人間なんて、結局は社会によって生かされている、いや生かしてもらっているのです。だから積極的に社会に貢献し、これを維持するために働かない者は生きている資格が無い。これがこの言葉の本当の意味です。そんなことに恥ずかしながら四十を過ぎてから漸く気付いた気がします。
そのことは分かっているのですが、それでも敢えてここは我儘を通します。言うなれば開き直りの身勝手です。でも、これは単なる自己解決、自己満足に過ぎませんが、そんな社会に対する不義理、負い目を心の片隅に刻んで旅をするのとそうでないのとではほんの少しは違うと思っています。
旅の道中でカブに給油が出来るのも、コンビニで簡単に食料が手に入るのも、プラグを差せば携帯に充電が出来るのも、全ては誰かの仕事があってくれるからであり、それによって世の中が成り立っていればこそです。働く全ての人々と、その手による仕事への感謝の気持ちを第一に旅を進めたいと思っています。何故なら、人が生きるために働き、その仕事の集積が社会を成し、その社会が文化を紡ぐ。そうやって連綿と積み重なってきた人々の暮らしと社会の営みを訪ね歩くことこそが旅であり、旅の目的そのものであるからです。



さて、ここからは今後の予定について少しだけ書いてみたいと思います。
そもそも、本来は来年の三月末をもって仕事を辞めたいところでした。旅に出る季節を考えても理に適っています。不本意ながら九月で辞めることになってしまったのは、偏に職場の事情に因るものです。来春の年度替わりで辞めることは極めて難しいことが既に分かっていたのです。そこで、もう去年から上司などに相談もして、上半期一杯で辞めることになったのです。

こうなってしまった以上、直ぐにでも旅に出たいのが人情です。ですが、敢えてそれを見送り、出発は来春に持ち越します。日毎に気温が下がり、日が短くなる季節です。今出発しても、すぐさま寒さに震え、越冬する場所を探さねばならず、その地へ移動するだけで打ち止めとなってしまうでしょう。
そして何よりも、人生の集大成とも言えるこの旅に臨んで、中途半端なことは絶対にしたくないという思いが強くあります。今秋すぐに旅立とうとすれば、納得いくまで万全の準備をしてから出発したいという思いと一日でも早く出発したいという思いの板挟みになり、冬の足音に急かされて焦燥に駆られることになってしまいます。そんな思いをするくらいならここは踏みとどまって、来るべき春に力を漲らせて走り出すことを選びました。

それまでは、アルバイトをしながら旅の準備を進めていきます。実は昨日アルバイトの説明を受けてきたところです。出発を来春とした以上はここで仕事を辞めてアルバイト暮らしをするのは馬鹿馬鹿しい話で、三月末をもって退職するのが理想的でした。しかし、登用してくれた恩を仇で返すことへのせめてもの罪滅ぼしとして、極力職場に負荷をかけない時期を見定めて辞めるのは最低条件でした。だから後悔や不満はありません。
さて、いま暫くは本ブログの更新を続けますが、準備を本格化する頃を見計らって新しいブログへ移行する予定でいます。引き続き宜しくお願い致します。





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    21:09 | Trackback : 0 | Comment : 6 | Top
Comment
2016.10.16 Sun 19:49  |  ビート★ #-
165慶子さん>

ありがとうございます。今回の決断に至るまでは様々な葛藤などもありましたが、旅やブログに関しては難しさや挑戦の意味合いを感じたことはありません。
Re: 「2回目」  [URL] [Edit]
2016.10.15 Sat 13:15  |  165慶子 #-
「2回目」だからこそ楽だったり簡単なこともあれば、「2回目」だからこそ難しいところもあります。旅自体はもちろん、旅ブログとしても。そういう意味では「2回目」が、本当の挑戦になるかもしれませんね。健闘を祈ります。
「2回目」  [URL] [Edit]
2016.10.13 Thu 10:49  |  ビート★ #-
jinさん>

素晴らしい勇気なのか、それとも向こう見ずの愚行なのか。答えは後年振り返った時に出るのか、そもそも全ては考えようなのか、そんな複雑な心境でおります。応援のお言葉に感謝致します。
Re: タイトルなし  [URL] [Edit]
2016.10.13 Thu 10:48  |  ビート★ #-
siroutoさん>

当面はこちらのブログにて準備の状況やその時その時の心境などを報告させていただくことになりそうです。引き続き拙文にお付き合い下されば幸いです。
Re: タイトルなし  [URL] [Edit]
2016.10.09 Sun 14:22  |  jin #-
先日はコメント欄で失礼しました。

今回のブログ私がずっと考えてきたこと、考えてきたこととほぼ一緒です。
ビートさんは踏み出された。
わたしにはできない。
素晴らしい勇気!
前回の旅の出発からずっとブログ拝見しておりますが、全開で応援します!

  [URL] [Edit]
2016.10.07 Fri 21:59  |  sirouto #VQLsZ0yQ
私は 無職 無趣味 無意味の 3無で生きています。
お迎えが来るまでは。 (私は単なる読者です)
お話はよくわかりました。 当方から意見はありません。 
バイトの間そして旅に出た後のブログを心待ちにしております。
トミーさんは社会と折り合いをつけている矜持 が好きです。
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ビート★

Author:ビート★
2009年5月10日、住んでいた部屋を引き払い、250ccのバイクも売り飛ばしてスーパーカブ90で日本一周の旅に出発しました。
道の駅や公園、海辺でテント泊して節約した金を全国の居酒屋巡りと日々のビール代に注ぎ込みつつ、全国を行脚して12月に沖縄に上陸。父親の急病による一時帰郷などを経て、2010年8月3日、念願の日本最西端・与那国島西崎に到達。再び鹿児島からの自走で北上し、2010年10月14日、523日目にして日本一周の旅を完結しました!

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