スーパーカブで日本一周
523日間に渡ったスーパーカブ90での日本一周の記録、およびその後日談を語ります。
旅人の系譜⑧ ~バイク旅への誘い~
バイクというのは面倒な乗り物です。
実質一人しか乗れないし、雨に濡れるし寒いし暑いし、転倒すればすぐに死ぬ。確かに駐車場所をとらないしどんな狭い場所にも入っていけたり、また中型ならば50万も出せば新車が買えるし維持費も安いなど、経済的な利点も多くあります。しかし、ひと昔前は車を持つだけの金が無い若者がまずは皆バイクに乗ったものですが、現代ではバイク乗りというのは余程の好事家しか居ないというのが現状です。
そんなバイクを愛して止まないライダーという人種は、口々にバイクの魅力を語ります。その多くは風を切って走る疾走感、そして開放感という事に尽きます。
しかし私は実際に乗ってみるまで、そんなバイクの魅力について懐疑的でした。あんな重苦しいヘルメットをかぶって開放感などあるものか。まして真夏でも厚着してブーツを履いて…Tシャツ一枚で軽快に、ヘルメットなどで視界を遮らずに乗れるオープンカーの方がよほど開放的に決まっている。そんな風に思い込んでいたのです。
あの日、あの晩の開陽台での宴会の最中、私と同じホンダ・ビートを所有しながらバイクでツーリングに来ていたおじさんと出会わなければ、あるいは今の私のバイク旅は無かったかも知れません。
バイク、バイクと賞賛するが、オープンカーの開放感と魅力をどうせ知らないのだろう。それなのにあんな苦労して荷物を積んで、雨に濡れながらよく走るもんだ…
バイクを知らなかった当時の私は一歩引いた目でツーリングライダー達を眺め、実用性の無いオープンカー乗りは確かに物好きだが、こいつらは物好きでは遥かに上をいくな、と冷ややかな目で見ていました。
そんな私は偶然宴席を共にしたおじさんから衝撃的な話を聞くのです。
「えっ、お兄ちゃんビートに乗ってきたんかいな。わしもビート持ってるんや!」
その大阪のおっちゃんと固い握手を交わし、私はキャンプ道具を積み切れないから今回は助手席を外して来たんですよ。どうやって荷物を積む工夫をしていますか?と質問しました。すると意外な答えが返ってきたのです。
「いや、今回はビートはお留守番でな。バイクで来たんや」
驚きました。
おっちゃんは自分と同じビートに乗り、オープンカーの魅力も知っている筈なのに、わざわざ暑苦しいヘルメットやブーツを着け、ビートよりもさらに荷物の積めないバイクで来たというのです。
何故?私は純粋に疑問に思いました。それに対するおっちゃんの回答は明快でした。
おっちゃんの口から語られたのは、それまで何度も聞かされてきた、まことに陳腐なバイクの魅力でした。風を切る快感、開放感…しかし、同じビート乗りから聞かされたその時、初めて実感を伴って私の胸に響いたのです。
そうだ、確かに理屈でバイクを否定するのは簡単だが、ヘルメットをかぶったことも実際バイクに乗ったこともない自分に何が分かるものか。少なくともこのおっちゃんはオープンカーよりもバイクの方が気持ちいいと思っているのだ。
バイクの魅力を熱く語るおっちゃんは最後にこう締めてくれました。
「確かにビートもええんや。少し迷ったんやけどな。夏の北海道いうたら、やっぱりどうしてもバイクや!」
本当にオープンカーよりも開放的なのか。本当に風を切って走るのはそんなに爽快なのか。本当にビートよりもバイクの方が旅が似合うのか。私は自分で確かめてみたくなったのです。
すぐにバイクも所有する、というわけにはいきませんでしたが、この日を境に私は明確にバイク、いやもっと正確に言えば、バイク旅というものへの興味を持つようになったのです。
(つづく)

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実質一人しか乗れないし、雨に濡れるし寒いし暑いし、転倒すればすぐに死ぬ。確かに駐車場所をとらないしどんな狭い場所にも入っていけたり、また中型ならば50万も出せば新車が買えるし維持費も安いなど、経済的な利点も多くあります。しかし、ひと昔前は車を持つだけの金が無い若者がまずは皆バイクに乗ったものですが、現代ではバイク乗りというのは余程の好事家しか居ないというのが現状です。
そんなバイクを愛して止まないライダーという人種は、口々にバイクの魅力を語ります。その多くは風を切って走る疾走感、そして開放感という事に尽きます。
しかし私は実際に乗ってみるまで、そんなバイクの魅力について懐疑的でした。あんな重苦しいヘルメットをかぶって開放感などあるものか。まして真夏でも厚着してブーツを履いて…Tシャツ一枚で軽快に、ヘルメットなどで視界を遮らずに乗れるオープンカーの方がよほど開放的に決まっている。そんな風に思い込んでいたのです。
あの日、あの晩の開陽台での宴会の最中、私と同じホンダ・ビートを所有しながらバイクでツーリングに来ていたおじさんと出会わなければ、あるいは今の私のバイク旅は無かったかも知れません。
バイク、バイクと賞賛するが、オープンカーの開放感と魅力をどうせ知らないのだろう。それなのにあんな苦労して荷物を積んで、雨に濡れながらよく走るもんだ…
バイクを知らなかった当時の私は一歩引いた目でツーリングライダー達を眺め、実用性の無いオープンカー乗りは確かに物好きだが、こいつらは物好きでは遥かに上をいくな、と冷ややかな目で見ていました。
そんな私は偶然宴席を共にしたおじさんから衝撃的な話を聞くのです。
「えっ、お兄ちゃんビートに乗ってきたんかいな。わしもビート持ってるんや!」
その大阪のおっちゃんと固い握手を交わし、私はキャンプ道具を積み切れないから今回は助手席を外して来たんですよ。どうやって荷物を積む工夫をしていますか?と質問しました。すると意外な答えが返ってきたのです。
「いや、今回はビートはお留守番でな。バイクで来たんや」
驚きました。
おっちゃんは自分と同じビートに乗り、オープンカーの魅力も知っている筈なのに、わざわざ暑苦しいヘルメットやブーツを着け、ビートよりもさらに荷物の積めないバイクで来たというのです。
何故?私は純粋に疑問に思いました。それに対するおっちゃんの回答は明快でした。
おっちゃんの口から語られたのは、それまで何度も聞かされてきた、まことに陳腐なバイクの魅力でした。風を切る快感、開放感…しかし、同じビート乗りから聞かされたその時、初めて実感を伴って私の胸に響いたのです。
そうだ、確かに理屈でバイクを否定するのは簡単だが、ヘルメットをかぶったことも実際バイクに乗ったこともない自分に何が分かるものか。少なくともこのおっちゃんはオープンカーよりもバイクの方が気持ちいいと思っているのだ。
バイクの魅力を熱く語るおっちゃんは最後にこう締めてくれました。
「確かにビートもええんや。少し迷ったんやけどな。夏の北海道いうたら、やっぱりどうしてもバイクや!」
本当にオープンカーよりも開放的なのか。本当に風を切って走るのはそんなに爽快なのか。本当にビートよりもバイクの方が旅が似合うのか。私は自分で確かめてみたくなったのです。
すぐにバイクも所有する、というわけにはいきませんでしたが、この日を境に私は明確にバイク、いやもっと正確に言えば、バイク旅というものへの興味を持つようになったのです。
(つづく)

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Comment
mixiの銀ちゃんさん>
16で原免、18で普通免、まさしく正しい道ですね。そして私と真逆です(笑)
子供の頃から旅が大好きで後から足を充実させたくて、バイクの免許取ったの30の時でした。そして旅の宿泊費をおさえるために散々キャンプもしましたが、キャンプ自体がそれほど好きというわけでもありません(爆)
16で原免、18で普通免、まさしく正しい道ですね。そして私と真逆です(笑)
子供の頃から旅が大好きで後から足を充実させたくて、バイクの免許取ったの30の時でした。そして旅の宿泊費をおさえるために散々キャンプもしましたが、キャンプ自体がそれほど好きというわけでもありません(爆)
Re: タイトルなし [URL] [Edit]
2012.02.24 Fri 20:35 | mixiの銀ちゃん #-
16才で原付免許取って、18才で普通免許取りましたから・・・
どっちも好きですが・・・
旅に興味を持ったんがおっさんになって・・・
しかも経済力が無いんで原付に戻りましたが・・・
キャンプは好きだったんで・・・
(`・ω・´)
どっちも好きですが・・・
旅に興味を持ったんがおっさんになって・・・
しかも経済力が無いんで原付に戻りましたが・・・
キャンプは好きだったんで・・・
(`・ω・´)
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